「下町ロケット第4話」を特許の観点で噛みしめる?

下町ロケット第4話

弁理士(特許の専門家)の須藤が、個人的な独断に基づき、感想などを以下おつたえします。

ある程度は、みなさんも予想していたと思いますが、
秘密を洩らしていたのは、ギアゴーストを守るべき顧問の末長弁護士でしたね。

でも、島津副社長のケーマシナリーの技術に対する「以前から知っている技術の応用にすぎない」の言葉から、窮地から脱出できそうです。

そこで、今回は、

  • 以前から知っている技術の応用は特許になる?ならない?
  • なぜ、このままだと負ける?
  • 殿村の感謝

について説明し、下町ロケットの魅力に迫りたいと思います!

あらすじ

TBSのサイトに記載されている内容をそのまま、以下に記載します。

佃(阿部寛)殿村(立川談春)の機転により、帝国重工による信用調査をなんとかクリアした佃製作所。ギアゴースト買収へと本格的に動きはじめた矢先、神谷弁護士(恵俊彰)から呼び出され、「ギアゴーストの開発情報が外部に漏れている可能性がある」と告げられる。
佃製作所の社員たちは、特許侵害訴訟の勝訴へ向けてギアゴーストに協力し解決の糸口を探すが苦戦。そんな中、思わぬ形で内通者の存在を知ることになった伊丹(尾上菊之助)島津(イモトアヤコ)は驚きを隠せず……。

一方、佃製作所の経理部長・殿村は仕事の傍ら、実家の農作業を手伝っていた。そんな中、ある重大な決心をして……。

引用元:日曜劇場 下町ロケット あらすじ

以前から知っている技術の応用は特許になる?ならない?

以前から知っている技術の応用は本当に特許にならないの?

結論からいうと、そんなことはなく、逆に、現在の特許はほとんどは以前から知っている技術の応用です。
乱暴に言ってしまえば、青色LEDの発明だって、それまでの赤色LEDの発明やその基盤技術がなければ、生まれてくることはなかったからです。

なぜ作中では、そのもととなる論文を探していたの?

特許は、従来技術(公知の発明や技術日本に限定されず、外国を含みます)の単なる組み合わせで、その結果得られる効果も当然予測された範囲だと、特許にはなりません
具体的に以下に説明します。
まず、以下の条件を前提とします。

  • 発明(あるいは技術)Aとそれによって得られる効果AAが公知である
  • 発明(あるいは技術)Bとそれによって得られる効果BBが公知である

このような状況で、ある人が発明C(=A+B)を発明したとします。
しかし、それによって得られる効果がAA+BBでしかなければ、その人の発明Cは特許にはならないということです。

このようなことから、佃製作所は、たくさんの段ボールで、従来技術となる技術論文(日本だけでなく、海外を含めて)を集めたのです。
そこには、ケーマシナリーの特許出願の際に、すでに技術情報となって公表されているはずのトランスミッションに関する技術論文があるはずと考えたからです。

作中では、島津副社長は、ケーマシナリーの技術は、「従来技術の単なる組み合わせ」でしかないということが正しかったのです。

でも、「以前から知っている技術の応用」という言葉のほうが、作中ではインパクトがあると考えたのかもしれません。

どうやって、求める従来技術を探し当てた?

佃製作所では、技術調査としてトランスミッションに関する過去の論文をあまり、考えずに集めたのでしょう。
おかげで、段ボールに詰められた大量の技術論文に頭を悩ませした。

そこで、もっと効率的に調べようと、島津副社長が通っていた大学の図書館で、教授の書いた論文を発見することができました。
良かったですね。

なぜ、最初から島津副社長に行ったところを聞かなかったの!
という突っ込みはこの際はおいときましょう。

なぜ、このままだと負ける?

発見した論文にケーマシナリーの特許のすべてが記載されていれば、それで問題はなかったのです。
しかし、今回は、従来技術の単なる組み合わせで、ケーマシナリーの特許を無効にしようとしています。
このため、発見した論文だけでは、上記した説明の発明Aしかなく、単なる組み合わせであること、発明Bも公知であることの証拠が必要だったのです。

しかし、佃製作所の神谷弁護士、技術分野も詳しく、やり手で、かっこいいですね。
勝てる裁判しかしない!
そのフレーズ、言ってみたいです。

下町ロケット第4話弁護士

殿村の感謝

殿村は佃製作所の退職を決めた際に、社内につるされた「佃プライド」、「ロケット品質」に感謝をこめて何度もお辞儀をしていました。
ほんと、殿村のお父さんの田んぼを愛する気持ちと同じです。
殿村の佃製作所を愛する気持ちがとてもよく伝わってきたシーンでした。

こういった「佃プライド」「ロケット品質」などの理念や志を職場に掲げることは、従業員のやる気だけでなく、心の支えにもなっているのかもしれません。

まとめ

今回は、以下の点について、個人的な経験と知識とから書かせていただきました。

  • 以前から知っている技術の応用は特許になる?ならない?
    以前から知っている技術の応用は本当に特許にならないの?
    なぜ作中では、そのもととなる論文を探していたの?
    どうやって、求める従来技術を探し当てた?
  • なぜ、このままだと負ける?
  • 殿村の感謝

今回は、中川弁護士にそそのかされ、末長弁護士の悪事を働いたのですが、顧問弁護士がたとえ10億積まれても、こんなことをすることはほとんどありません。
ので、顧問に限らず弁護士、もちろん、弁理士にも安心して、ご相談ください。

もし、わからない部分や疑問点などありましたら、ぜひコメントまたはお問い合わせください。

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