世界的スポーツイベント活用で知財の観点で留意すべき点とは?

世界的スポーツイベント活用で知財の観点で留意すべき点とは?

【スタッフ視点の知財ブログ(7)】

今年は9月20日よりラグビーワールドカップが日本で開催されています。
このような世界的なスポーツイベントが、日本での開催ということで、
私須藤も、にわかファンとなり、応援しています。

振り返ってみれば、この注目度、ぜひ自社の事業の成功・拡大に活用したいと思いませんか?

活用というと、このようなスポーツイベントで使用される大会名称やロゴ、道具・部品などを使用することになりますが、
これらを無断で使用してしまうと、知的財産権の侵害として、
結果的に社会的な制裁を受け、大きな損失を被ることになってしまいます。

そこで、このような世界的スポーツイベントを上手に活用したいと思っている方に対して、
知的財産権の観点で留意すべき点とはなんであるか?を、
いま、ラグビーの試合観戦にはまっているスタッフMさんに、
このスポーツイベントと知的財産の状況を調査してもらい、
それに基づいて、世界的スポーツイベントを活用するうえでの知的財産権の観点で留意すべき点について
説明していきます。

つまり、これを読むことで、世界的スポーツイベントでは注意すべき以下のポイント

  • どのような知的財産権が取得されているか、
  • 知的財産権の取得者が一人(一組織)ではないこと、
  • 知的財産権は、出願から公開になるまで不明な時期があること、
  • 権利化を迅速に行うための早期審査制度があること、

が理解できるようになります。
これらのことが理解できるようになることで、世界的なスポーツイベントの盛り上がりを自社の事業成長に結びつけることが可能となります。
少しでも知財の力を活用していただければ幸いです。

ラグビーワールドカップにおける知的財産権の取得状況は・・・

スタッフMさんスタッフMです。

ラグビーW杯 対アイルランド戦&サモア戦、日本勝利!!

素晴らしいですね、ただただ感動しました・・・

特にアイルランド戦の勝利は狂喜乱舞しました。日本強いっ

といいながら、
ラグビーに関しては全くの知識ゼロで、日本開催で世間の盛り上がりに便乗して、
にわかファン化しておりまして・・・。スクラムの写真

ルールは難しく、ついていけませんが、
出場国のチームや選手の情報、大会中のニュースや試合結果を追っていくのは、
なかなか楽しく、ミーハーな私として血が騒ぐものです。

さて、いうまでもなくスポーツについても知的財産権は、
放送・広告等メディア、イベント・大会、名称やロゴ、道具・部品など
多種多様にわたり活用
されています。

今回私が個人的に注目したのは、日本代表のユニフォームです。

『胸部が窮屈にならないようこれまではダーツでゆとりをもたせていたが、プレー中に縫い目が裂ける可能性があるため、新ジャージでは立体成型技術を導入。肩や脇下などの縫い目には肌に触れても気にならず、衝撃を受けても擦れにくいゴールドウイン独自の「スマートシーム(SMART SEAM®️)(商標登録第5720449号)」テクノロジーをラグビー用に強度を高めた「スマートシーム ラグビー」を採用した』(https://www.fashionsnap.com/article/2019-07-04/rugby-japan2019/
とのこと。

ゴールドウインのテクノロジーでラグビーに関係ある特許はどんなのか調べてみると、
特許第6440887号「身体形状の変化に対応した衣服の設計を支援する装置、方法及びプログラム」と
特許第5420086号「スポーツ用上衣」の2つがありました。
これらにより、高い機能を有するユニフォームを製造しているようです。

ラグビーはとても激しい競技なので、
選手の身体を守り、快適にプレイを続けるための頑丈なウェアは身体面で、
また、上質なユニフォームであれば安心して試合に集中できるという精神面で、
選手をサポートするので、
ウェアの質は勝敗を左右する要因のひとつといえるでのではないでしょうか。
殊にW杯といった世界規模の大会においては非常に重要です。
結果が良ければ、関連する知的財産権の貢献度は大きいものでしょう。
しかしながらその逆もあるわけで、携わる専門家たちは責任重大といえます・・・

こだわりのユニフォームでプレイするラグビー日本代表。
次のスコットランド戦は台風で中止になるかもしれず、その場合は引き分けになるようですが、
勝敗にかかわらず大一番の試合は見たいです!

日本代表には決勝トーナメント、
さらにその先へ、強敵をなぎ倒し、勝ち進んでいってもらいたい
ですね、
がんばれ!ブレイブブロッサムズ!!
(BRAVE BLOSSOMS(商標登録第5823264号))

なお、以下のエンブレムとロゴも、ユニホームにとっても映えていると思います!

エンブレム 大会ロゴマーク
ギャップ萌えするエンブレム(商願2019-59494) クールな大会ロゴマーク(商標登録第5861422号)

こちらも、ぜひチェックくださいね!
ラグビーワールドカップ2019日本大会ホームページ
https://www.rugbyworldcup.com/

知財の観点で留意すべき点の説明

知的財産権の取得状況

弁理士須藤弁理士須藤:私もラグビーはルールは全く知らないけど、見て、すごいな、と思いました。
(10月5日には、サモアにも4トライでボーナスポイント勝ち取っての勝利、素晴らしい!)
今回ラグビーをはじめて見て、サッカーや野球のようにスマートでないかもしれないけど、
その分これまで何を積み重ねてきたかが、良く伝わってきて、
とても共感を得やすいスポーツかもしれないですね。

さて、Mさんの報告から、今回のラグビーワールドカップの開催では、単にユニホームに着目しただけでも、2つの特許権(特許第6440887号、特許第5420086号)、3つの商標権(商標登録第5720449号、商標登録第5823264号、商標登録第5861422号)と1つの商標登録出願(商願2019-59494号)が関係しているということだね。

これで、気づいたことはあるかな?

スタッフMさんスタッフM:やはり、世界的なスポーツイベントとなると、ユニホーム1つとっても、特許と商標というように、知財とは関係なさそうでも多面的に権利保護を行うことで、ブランドの育成を図りイベントの成功を支えているのだと、感じました。

弁理士須藤弁理士須藤:うん、そうだね。
特許を取得することで、ユニホームの品質を保ち、商標を取得することで、ユニホームのブランド力をアップさせ、結果的に大会への注目度をより高めてイベントを成功に導いているともいえるね。

ユニホームにロゴマークとエンブレムをつけるにはどうすればいい?

弁理士須藤ところで、この3つの商標権と1つの商標出願で、気が付いたことはないかな?

スタッフMさんスタッフM:そうですね。
・・・
あっそうですね。
商標権者がバラバラですね。
商標登録第5720449号は株式会社ゴールドウイン、商標登録第5823264号は公益財団法人日本ラグビーフットボール協会、商標登録第5861422号はラグビーワールドカップリミテッドが商標権者です。なお、商願2019-59494号は公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が出願しています。

弁理士須藤弁理士須藤:ということは、
ユニホームをデザインして販売しているは、カンタベリー(株式会社カンタベリーオブニュージーランドジャパン)なので、
ユニホームに上記すべてのマークを使用しようとすると、上記3社それぞれとライセンス契約をする必要があるということになるんだよ。
実際に、ユニホームには、上記エンブレム(商願2019-59494号)とロゴマーク(商標登録第5861422号)がついているから、
カンタベリーは、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会とラグビーワールドカップリミテッドとライセンス契約をしていると考えられるね。

スタッフMさんスタッフM:今回の大会の運営は、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会だと思います。
だから、上記ロゴマークも公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が取得して、ラグビーワールドカップリミテッドがわざわざ入ってこなくてもよかったのでは?、と思いますけど。
そのあたり、どうなのでしょうか?

弁理士須藤弁理士須藤:うーん・・・
実質的には、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が実質的に運営しているので、ラグビーワールドカップリミテッドに使用料を払うのは腑に落ちないという気持ちもわからなくもない。

ただ、ラグビーワールドカップリミテッドが、今までもワールドカップのブランドを向上させ、これからもそれに責任を持つということだ、と思うので、それでよいのではないかと思う。

実際に、ワールドカップといえば、サッカーがもっと有名だけど、
FIFA(フェデレイション インターナショナル デ フットボール アソシエーション)が
各国で行われるワールドカップの入ったロゴマークの権利を取得して管理しているんだよ。

スタッフMさんスタッフM:ということは、世界的スポーツイベントに関連するグッズなりをデザインして販売しようとするなら、国際的な組織が有する知的財産権と国内で実行運営する組織が有する知的財産権の両方について、ライセンス契約をする必要があるということですね。

弁理士須藤弁理士須藤:そのとおりだね。
この点については、だれが権利者であるかをしっかり確認して対応する必要がある。
ちなみに、上記エンブレムは、出願日が2019年 4月 24日であり、早期審査※をかけず、通常審査を受けることとしている(2019年10月7日現在)。
このため、まだ商標権とはならず、現在審査待ちの状態となっているんだよ
(商標権となっていなくても、ライセンス契約は可能なのです!)。

※2019年10月7日現在、商標出願の数が増えて、出願から9、10か月程度で審査が行われる状態である。
このため、使用していることなどの一定の条件が揃えば、審査期間を3か月程度まで短縮することができる
これを早期審査制度という(特許と意匠にもあり)。
本件の場合は、上記エンブレムを実際に使用していることから、早期審査の対象とすることができると考える。

どうやってユニホームのデザインを保護するの??

弁理士須藤ところで、ユニホームについては、知財の観点からどうやって保護するか、わかるかな?

スタッフMさんスタッフM:そうですね。
あのマークは商標としても保護可能と思いますよ。
・・・・
それと、意匠権ですか?

弁理士須藤弁理士須藤:そう、商標でもマークとしては可能性があるね。
意匠権で保護することになるね。
だから、デザインをしたカンタベリーから、意匠出願されそれが権利化されていてもよかったけど、見つからなかったようだね。
見つからなかった理由は、以下の2つのうち、いずれかだね。

  • そもそも意匠出願をしていない。
  • 意匠出願したが、まだ公開されていない。

スタッフMさんスタッフM:そうなんですか??
どうゆうことでしょうか???

弁理士須藤弁理士須藤:まず、出願しなかったとした場合の理由として、
ユニホームは、このワールドカップ期間だけしか売れない可能性があるので模倣されてもよいと考えた、あるいは、ユニホームの模倣は不正競争防止法でも対応できると考えた。

次に、出願したが公開されていない理由として、デザインが決まらず、出願が遅れたので、まだ審査されず公開されていない。

といったことだと思う。

意匠の場合は、通常の審査であれば、出願から審査まで半年ぐらいはかかりそうだし、
審査が終了しないと公開されないので、意匠出願の有無はわかりにくいともいえるかもしれないね
(なお、意匠も早期審査の適用が可能です)。

まとめ

世界的スポーツイベント活用で知財の観点で留意すべき点は、

  • どのような知的財産権が取得されているか、
     ⇒多面的に知的財産が取得・活用されている
  • 知的財産権の取得者が一人(一組織)ではないこと、
     ⇒国際的な組織と国内の組織とで、知的財産を有しており
    その知的財産権を使用しようとするなら、いずれともライセンス契約が必要。
  • 知的財産権は、出願から公開になるまで不明な時間があること、
     ⇒通常、商標であれば、9-10か月、意匠であれば半年程度(2019年10月時点)
  • 権利化を迅速に行うための早期審査制度があること、
    ⇒商標では使用・実施しているなどの条件により、3か月程度以内に短縮可能

もし、わからない部分や疑問点などありましたら、お気軽にぜひコメントまたはお問い合わせくださいね。

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