弁理士(特許の専門家)の須藤が、以下、個人的な独断に基づき、以下、感想などをお伝えします。
今回は、場面が様々に変わり、内容を追っていくのが大変なくらい、話の密度が濃かったですね。
その中で、藤間社長が’遠山の金さん’ばりにカッコよく登場し活躍して、とてもスカッとしました。
(遠山の金さんって何?と、気になる方は、こちらをご覧ください。古くて、すみません)
最終回に向けて、いよいよ場面が整ってきたな、という感じです。
そこで、今回は、
- アルファ1の不具合の解析
- ロケットエンジンのバルブ開発競争
- なぜ、佃社長は財前から依頼されたエンジンとトランスミッションの供給要請について、2つ返事で答えなかったのか?
について説明あるいは記載し、下町ロケットの魅力に迫りたいと思います!
あらすじ
TBSのサイトに記載されている内容をそのまま、以下に記載します。
農業機械の展示会『アグリジャパン』という公の場で、醜態を晒してしまった帝国重工の無人農業ロボット「アルファ1」。信用回復のため原因究明に奔走する的場(神田正輝)や奥沢(福澤朗)たちは、最初から自分たちの落ち度の可能性は認めず、野木(森崎博之)の自動走行制御システムに問題があったと結論づける。しかも、その原因を究明するにあたり、開発コードをよこせと無理難題をふっかけてきて……。
引用元:日曜劇場 下町ロケット あらすじ
アルファ1の不具合の解析
野木教授の制御コードの検証テスト
的場と奥沢から、野木教授に対して制御コード(開発コード)に不具合があると嫌疑をかけられました。
このため、野木教授を助ける意味合いもあり、佃社長は、野木教授と共同で開発していたエンジンとトランスミッションとで、検証テストをすることを提案しました。
そして、佃製作所のトラクタは、無事テストをクリアすることができました。
結果は予想できたものの、やはりドキドキしましたね。
なお、検証テストの内容は、ダーウィンと対決したときのテストフィールドと同じものを作り、同じことを行うべきだったのでないかな?と思いました。
まず、前回に比べて、今回のフィールドは水が多く、ひどいぬかるみでした。
さらに、前回行われた、移動のために設けられた橋(歩み板?)を渡るテストが、土が盛られた高台に上る登坂テストになっていました。
このため、前回の条件とは異なるので、完全な検証テストとは言えないかもしれない、と思ってしまいました。
が、今回のテストのほうがより厳しいテストであったかもしれませんね。
奥沢の言った特許申請に関わるもの
検証テストの結果に対して、的場と奥沢とは、一回のテストだけでは、制御コードに不具合はないと言いきれないとして、まだ野木教授に責任を押し付けようとしていました。
これに対して、佃社長は、「テストを1万回、10万回やってもいい」といっていました。
さらには、佃社長は、帝国重工のトランスミッションの調査のお願いをしていました。
それを、的場と奥沢は全く受付なかったです。
私も、腹が立ちました。
そこに、藤間社長が現れ、それをひっくり返しました。
劇的でした。
その際に奥沢は、「佃製作所に調査させるにしても、特許申請に関わるものがある。」といっていました。
言い逃れに特許が利用されるのは大変腹立たしいのですが、この件について、説明します。
ここでの、「特許申請に関わるもの」の意味ですが、次の2つがあると思われます。
- すでに特許出願した内容だが、まだその出願が公開されていない。
- まだ、特許出願をしていない内容。
まだ、特許出願していない内容が見られたら、まずい、というのは、以下の理由によります。
- その内容をみた他人が勝手に特許出願してしまうおそれがある
- 他人が知ることとなり、新規でなくなり、特許性がなくなったりする
では、すでに特許出願した内容であれば、その内容を他社に見せても大丈夫か?
といえば、その出願がまだ公開されていなければ、そうとは限らないのです。
理由は以下の理由によります。
その特許出願が公開される前に、その内容を見た他人がその内容をわずかに改良した改良特許を出願することで、その改良特許を取得できる可能性が高いからです。
つまり、その他人は、改良特許を容易に特許権とする可能性があり、かつ自社の改良特許の取得が阻害されてしまう可能があるのです。
作中では、特許の部分を隠して、佃製作所に調査してもらうこととなりました。
しかし、現実には特許申請の部分に触れずに十分な調査をすることはちょっと無理があるかもしれません。
佃製作所としては、しっかり契約文書を残してスキを見せずに、佃製作所の今後の特許出願に、帝国重工から文句を言われないようにしてもらいたいと思います。
不具合のあるトランスミッションから得られる知識は大したものではない!
と言ってやりたいところですが、
「失敗は開発の宝!」(第8話参照のこと)ですので、実際には侮れないのです。
実務では気を付けてもらいたいところです。
藤間社長の謝罪の言葉
奥沢がつい、「調査をして、もし不具合が見つかってしまったら?」言ってしまいました。
私も、ついに言ってしまったか!と思いました。
案の定、藤間社長も聞き逃さず、的場も顔色を変えました。
そして、奥沢の「不具合は見つからなかった・・・見つけられなかった。」の言葉に対して、
藤間社長は、
「しっかり調べる!それが技術者だ。恥を知れ!製造部は降りろ!責任のがれが見苦しい!」
と怒りました(奥沢の顎を、指で上げたしぐさは迫力ありましたね)。
そのあと、藤間社長は、野木教授に頭を下げて謝りました。
まだトランスミッションの不具合が決定していない状態にも関わらず、です。
このような潔い態度が、本当のファンを作るのでしょうね。
大変、参考になります。
原因の解明
佃社長が、動画でチェックしていたように、スリップした後に、自動的にギヤチェンジして急加速していました。
佃製作所の調査の結果、原因は、シフトチェンジミスと判明しました。
通常であれば、自動車と同じで、スリップ後には、ギヤを下げて、ゆっくり移動するようにすべきでしたが、それとは逆になっていたようです。
ロケットエンジンのバルブ開発競争
なぜ、佃製作所は帝国重工とのバルブ開発競争に勝てたか?
佃製作所は、帝国重工とのバルブ開発競争に見事に勝って、正式採用されることとなりました。
不思議ですね。
私がそう考える理由は、
- すでに、佃製作所の現状のバルブは、帝国重工でリバースエンジニアリングなどにより、徹底的に調査されていると考えられる
- バルブのユーザは、帝国重工であり、バルブを採用するシステム側をよく理解している
- 開発メンバーを大規模にかけることができる
からです。
しかし、和泉沙耶(佃の元妻)が娘の利菜に言っていたように、「(成功の陰には)何十倍もの失敗があるから」なんでしょうね。
勿論、この「失敗」を佃製作所はたえず生かそうしているからですが・・・。
なお、佃社長は、従業員に対して、「残念なお知らせが帝国重工からあった(?)」という切り出しで、バルブの正式採用を伝えました。
理由は、従業員を驚かせることもあったようですが、娘想いを表現しようとしたこともあったようですね。私自身は、あまり従業員に出すのはどうかなーとは思ってしまいました。
帝国重工の耐久試験値5000?と佃製作所の耐久試験値8000?
帝国重工の耐久試験値5000(ぐらい)で合格!と水原が言っていました。
あの(一見冷酷な)水原が合格!と叫ぶぐらいだから、この5000?の値は素晴らしい成果だったのです。
それに対して、佃製作所の耐久試験値は8000?でした。
合格ラインが4000程度だったとすると、佃製作所の耐久試験値8000?は約2倍(以上?)で安全率も極めて高く、とてつもない値だったのです(安全率が気になる方はこちら)。
このため、私にも、佃利菜の父親への「佃製作所のバルブに感動した!すごい!ものづくりを頑張るしかない!」という言葉が自然と理解できました。
なお、ほぼ佃製作所のバルブの正式採用を決めたのは水原です。
自社の製品が仕様をクリアしたなかで、公平に佃製作所のバルブを評価したことは立派な姿勢だと思いました。
余談ですが、水原は、地味で目立たないけど、良いものはよいと認める、という理念を守るよい人だと思いました。
リユーザブルエンジンと火星
リユーザブルエンジンは、たぶん、ロケットを打ち上げた後に、そのエンジンを回収して、再利用可能とするエンジンであると考えられます。
帝国重工は、ロケットを今ところ、人工衛星を打ち上げるために使用すると思われます。
今回のシーンの最後で、佃社長が娘と土手で寝転がって火星を見ていました。
これをみて、私は、今年騒がれた、スペースXのイーロン・マスク氏によるロケットの再利用方法と火星移住計画の発表を思い出しました(興味のある方はこちら)。
火星がなくても、たまには土手に転がって星空を見上げて、夢を語り合うのもよいですね。
なぜ、佃社長は財前から依頼されたエンジンとトランスミッションの供給要請について、2つ返事で答えなかったのか?
アルファ1の不具合が明確になったあと、佃社長は、財前に再度、小型エンジンとトランスミッションの供給をお願いされました。
これに対して、佃社長は、回答に時間を頂きたい、と答えました。
この理由は、以下の3つの可能性があるのかなと思います。
- 帝国重工に再度裏切られるかもしれない
- 失敗はできない
- 帝国重工側について、本当に大丈夫か?
1つめの理由について、
藤間社長が続投したばかりで、そう、簡単に裏切られないとは思うので、佃社長が思ったとしても無視できるレベルと思います。
2つめの理由について、
アルファ1ですでに信用が失墜してしまったので、「失敗は開発の宝!」とは言っても、今度失敗したら終わりというプレッシャーが大きいと思います。
一応、「テストを1万回、10万回やってもいい」とはいっていましたが・・・
失敗したら、藤間社長の進退に関わり、かつロケットビジネスへの影響もあるからです。
このシーンでは、山崎の「トランスミッションがいまいち。・・・実験でなく本番です。失敗は許されない!」に集約されています
(「失敗」も、もてはやされたり、嫌がられたりで、大変ですね(笑))。
3つめの理由について、
この部分もそれなりにあるのではないかと私としては思います。
やはり、いくら良い製品でも、悪評がついてしまうと、その悪評を払しょくするのは極めて困難だからです。
作中で、佃社長は、殿村と話をした際に帝国重工のアルファ1の評判を聞いていました。
そして、佃社長は仮に帝国重工に佃製作所が協力したら、買ってくれるかとも聞きました。
これに対して、殿村は買いますよと答えたのですが、佃社長は単なるリップサービスとしか捉えませんでした。
これに対して、殿村は「義理でなく、品質です。自分の米の売り場は変更されたけど、売上は変わっていません。私は、佃製作所の品質を信じています。」といった内容のことを話しました。
佃製作所には、何とか、トランスミッションに自信を持ち、かつ悪評を払しょくしてもらいたいと思います。
そういった意味では、これからの島津元副社長の登場とその活躍に期待したいと思います。
まとめ
今回は、以下の気になる点について、個人的な経験と知識とから書かせていただきました。
- アルファ1の不具合の解析
野木教授の制御コードの検証テスト
奥沢の言った特許申請に関わるもの
藤間社長の謝罪の言葉
原因の解明 - ロケットエンジンのバルブ開発競争
なぜ、佃製作所は帝国重工とのバルブ開発競争に勝てたか?
帝国重工の耐久試験値5000?と佃製作所の耐久試験値8000?
リユーザブルエンジンと火星 - なぜ、佃社長は財前から依頼されたエンジンとトランスミッションの供給要請について、2つ返事で答えなかったのか?
話もいよいよ大詰めです。
こんどこそ、島津元副社長の活躍に期待しましょう。
もし、わからない部分や疑問点などありましたら、ぜひコメントまたはお問い合わせください。
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