【スタッフ視点の知財ブログ(5)】
日常で使用する便利グッズ、アイデア次第でヒット商品になります。
このため、そのアイデアを保護するために知財の取得が必須と思えます。
しかし、今の特許などの知財の取得方法で、本当にそのアイデアを守れていますか?
他人にすぐに真似られてしまい、自分には苦労しか残らなかった、なんていうことは避けたいものです。
そこで今回は、
便利グッズのアイデアを特許などの知財で効果的に守る方法を知りたい方に対して、
具体的な便利グッズをスタッフNさんに報告してもらい、それに基づいて、特許などの知的財産の上手な活用方法について説明していきます。
これを読むことで、具体的な知財の活用方法として、
- 商品を販売する前に、できるだけ複数件の知財(特許、意匠、商標)を出願しておくこと、
- その際には、異なる種類の知財を組み合わせて活用すること、
- 便利グッズでは、特許と意匠との組み合わせがよいこと、
が理解できるようになります。
また、今回は、知財戦略策定に不可欠なパテントマップの活用の一例も示しています。
これらのことを理解することで、便利グッズに対する有効で効率的な知財の活用をすることができるようになります。
そして、便利グッズに限らず、パテントマップを使った知財戦略を立てることも可能となります。
少しでも知財の力を活用していただければ幸いです。
最近注目して購入した具体的な便利グッズは・・・
スタッフNです。
子供達の夏休みも終わり、世のママ達は通常営業に戻る時期ですね。
楽しい夏休みが終わってしまい憂鬱そうな子供達とは逆に、負担が減り開放感を感じるママ達も多いのでは。
実は、私もその1人です(笑)。
・・・・
共働き夫婦が増えている今、時短、便利グッズへの注目度が益々高くなっていますね。
家事、掃除の負担が少しでも減らせたら…
と願わずにはいられないバタバタな毎日。
便利家電やグッズに目のない私ですが、以前からずっと気になっていたアイデアグッズをついに購入しました✨
それは、株式会社三輝さんの『詰め替えそのまま』です。
『詰め替えそのまま』という名前の通り、シャンプーやボディソープの詰め替え用パウチに直接取り付けて使えるお風呂グッズです。
この商品、メディアでも多数とりあげられ、現在品薄状態。。
ネットでも入荷待ちが多く、価格もそこそこ高いため、便利グッズにすぐ飛びつきがちな私でさえ、今までなかなか買えず足踏み期間が長かった商品の一つ。
・・・・
1か月使った感想です。
すごく、いいです、コレ‼️おすすめです‼️
理由は、
- ボトルに詰め替えなくていいので楽
- 中身が空気に触れないので衛生的
- 1回分の量が決まっているので使いすぎない!!
- 逆さ吊りなので絞り出さなくても、内容物が勝手に最後まで出てくれる。
- 床に置かないので床掃除が楽で省スペース。
- ボトル掃除をしなくていい。
- 吊るしているので乳幼児には手が届きづらく、ポンプで散々された悪さをされない!
今までありそうで無かったアイデア便利グッズ。
今、売れているのも納得です。
商品名「詰め替えそのまま」は商標登録されており、また特許、意匠共に取得されており、
知財にしっかり守られている商品ですね。
もうボトルタイプには戻れません‼️
こういう生活が少し楽になる便利グッズはこれからもどんどん買っていきたいと思います。
便利グッズで儲けるための特許などの知財の活用方法の説明
特許情報プラットフォームによる特許、意匠、商標の出願状況の調査
弁理士須藤:なるほど、この株式会社三輝さんの便利グッズ、メリットがたくさんありそうだね。
・・・・
しっかし、Nさんは、かなりこの商品にほれ込んでいるようだね。
特に、「ポンプで散々された悪さをされない!」の部分にNさんのいままでの苦労を感じるね(笑)。
スタッフN:子供が小さいと大変なんですよ。
ほんと・・・
弁理士須藤:(笑)
・・・・
ところで、Nさんも書いてくれたけど、この便利グッズについては、特許の出願・権利化だけでなく、意匠権、商標権の取得もされているね。
ならば、実際に特許庁の特許情報プラットフォーム(J-Plat-Pat)(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/t0100)で、時系列で特許、意匠、商標の出願・権利化状況を調べてみよう。
スタッフN:商標調査はたまにしているので、わかりますよ。
意匠調査、特許調査も商標調査と同様ですよね。
(商標調査は方法は、こちらのブログを参照下さい)
任せてください!
「出願人」の欄に、「株式会社三輝」を代入(※すでに出願人が出願をしているなら、「申請人識別番号」の欄に、番号を入れると同一名義で異なる出願人の出願を除くことができます)して
・・・・・
でました!
特許は、出願が24件、うち特許権が16件、意匠権は9件、商標は、出願段階が1件、商標権が6件です。
・・・・
でも、どれが今回の『詰め替えそのまま』(商標登録5444800)に対応するのかわかりません・・・。
パテントマップの一例の説明
弁理士須藤:ちょっと、そのデータを渡して。
わかりやすいように、関連するものだけ選別してグラフに加工してくるから。
(しばらく後)
・・・・
お待たせ。
パテントマップというグラフを作成したので、これで説明しよう。
ここでは、横軸に年月、縦軸に、特許、意匠、商標の出願数を記載している。
なお、特許、意匠については、『詰め替えそのまま』の商品とは別の商品として販売されるものを除外している。
すると、特許は、出願が6件、うち特許権が4件、意匠権は5件かな(この段階で、商標を4つに限定)。
なお、『詰め替えそのまま』の発売時期も併せて示している。
なお、以下のグラフで、「ハンガー」は、詰め替えパックの下につけて、詰め替えパックを吊り下げるためのものを指している。
また、「アーム」は、その「ハンガー」を吊り下げるために使用する部品で、確か『詰め替えそのまま』と一緒に販売されていると思う。
更に、「ポンプ」は、詰め替えパックの上につけて、詰め替えパックから内容物を逆流しないように、吐出させるためのものを指している。
いずれも、誤解の生じないように、商品についた名称を使用している。
スタッフN:パテントマップ???
なんか初めて聞きました。
すごい効き目???がありそうですが、よくわかりません。
弁理士須藤:パテントマップは、例えば、特定のジャンル(商品、技術、企業)において、複数の特許出願・権利があるとき、その特定のジャンルにおける特許出願・権利の傾向や特徴などを分析するために使用するものなんだよ。
例えば、この特定のジャンルが、自社の商品であれば、
その商品の機能毎に特許出願数の多少を分析することができる。
その結果を踏まえて、どの機能に対して特許が少ないから、次にはその機能について特許出願して自社の商品の特徴の弱点をなくしていこう!
といった特許出願の戦略(知財戦略)を立てることが可能になるんだよ。
・・・・
まあ、ここでのパテンマップは、株式会社三輝さんの知財の出願状況を時系列に並べ、発売時期との関係を示したものなんだけどね。
これに限らず、パテントマップの形態には様々なものがあるんだよ。
特許と意匠の活用状況の説明
スタッフA:そうなんですね。
・・・・
じゃ、このパテントマップからわかることは・・・『詰め替えそのまま』を発売する前には、3件の特許と3件の意匠がすでに出願されていたということですかね。
弁理士須藤:そうだね、それが重要なんだよね。
つまり、商品を販売する前の段階で、複数の出願を、異なる種類の知財(この場合は、特許と意匠)で出願しておくことが大切だということだね。
勿論、1件の出願を吟味して、質を上げることも重要だけど、やはり、数や種類が大切。
異なる種類や複数の知財を活用することで、商品の真似を多面的に防御することが可能になるからね。
スタッフA:ちなみに、特許でいえば、出願の数は、どの程度しておいたほうが良いのでしょうか?
弁理士須藤:そうね。
実は、明確な指針はないんだよね。
ただ、私感では、新たに開発した要素や機能毎に、最低でも1件、できれば2件は出願しておくことが望ましいかな。
やはり、発売直後では、特許を考えている時間もおしいことが多く、自分が特許や開発をしていない間の他人からの真似を防止できるようにすべきだからね。
例えば、1件目は他人がまったくの真似をしてくることを防ぐようにし、2件目は他人が真似を回避した別のアイデアで商品を作ろうとすることを防ぐようにするとか・・・
今回の場合には、要素としてハンガーとポンプの2つだけで、『詰め替えそのまま』の構造はシンプルな構成だね。
しかも、株式会社三輝さんは、既に高性能の工業用の流体継ぎ手を製造している実績がある。
このため、株式会社三輝さんは、『詰め替えそのまま』の「ポンプ」の機能や構成については本当にキーなる特許権や多くのノウハウを有していると思う。
だから、特許出願としてはハンガー2件、ポンプ1件、それに加えて3件の意匠出願と、『詰め替えそのまま』を発売する前に行うことで、高い知財的な防御ができているのだろうと思う。
なお、便利グッズは形があり、目に見えるものなので、特許と意匠とを組み合わせて出願しておくことは、とても良い考えだと思うよ。
商標の活用状況の説明
スタッフA:あっ、
一ついいですか?
株式会社三輝さんは、なぜ、『詰め替えそのまま』の商標出願を発売前ではなく、2年後に出願しているのですか?
発売当初から、月千個単位で売れたという話ですので、ネーミング(商標)を真似られしまうおそれが十分あったはずですよね。
しかも、商標だって、先願主義だから、なるべく使用する前に出願すべきですよね。
弁理士須藤:うーん(鋭い)。
それは、株式会社三輝さんに伺ったわけではないので、あくまでも推測だけど・・・
『詰め替えそのまま』の商標は、詰め替え用パウチをそのまま使用することなので、普通に使用する語句を単に略しただけの極めて簡単で、かつ、ありふれているともいえるよね。
このようなネーミングに商標権が与えたら、他の人が自由に使えなくなり、大勢の人に不便をあたえる可能性がでてくると思う。
だから、株式会社三輝さんは、『詰め替えそのまま』の販売前に商標出願しても、権利化できないと考え、出願しなかったのかもしれない・・・・
何度もいうけど、あくまでも、想像の範囲での回答だけどね。
スタッフA:なるほど・・・
・・・
そうなんですか?
・・・
じゃ、2年後に商標出願して登録された理由はなんでしょうかね???
弁理士須藤:(笑)
それは、・・・
商標法では、使用されて極めて有名になると、極めて簡単で、かつ、ありふれているネーミングでも、商標登録を受けることができることになっている、
こうゆうことを株式会社三輝さんは知っていたからかもしれない。
実際に、『詰め替えそのまま』は、発売から右肩上がりに販売数が増えたので、商標出願に対してその適用があってもおかしくはないと思うね。
あくまでも推測だけど・・・
・・・
いずれにしろ、株式会社三輝さんの知財戦略は素晴らしい結果を残しているといえるね。
我々も、クライアントがこのようにヒット商品を生み出せるような知財戦略を提供できるようにしていきたいね。
まとめ
便利グッズで儲けるための特許などの知財の活用方法は、以下のようになります。
- 商品を販売する前に、できるだけ複数件の知財(特許、意匠、商標)を出願しておくこと、
- その際には、異なる種類の知財も活用すること、
- 便利グッズは、形になるものであり、特許と意匠との相性はよいこと、
もし、わからない部分や疑問点などありましたら、お気軽にぜひコメントまたはお問い合わせくださいね。
この記事へのコメントはありません。