弁理士(特許の専門家)の須藤が、以下、個人的な独断に基づき、以下、感想などをお伝えします。
藤間社長の続投が決まり、ロケットの打ち上げも再開されることとなりました。
帝国重工でバルブの内製化を進めていることが明らかとなりましたが、佃社長と佃製作所に射す希望の光が少しずつ増えていると思いました。
なお、今回は、的場次期社長候補が主導したアルファ1が酷い失態をしたのですが、どうしても喜べませんでした。
理由は、「下町トラクタ ダーウィン」側も悪い連中だからあり、特に、キーシンは野木供給の研究成果を盗んで名声を得ているからだと思いました。
そこで、今回は、
- 佃社長の言葉
- 帝国重工のアルファ1
- 下町トラクタの商標取得はだれができる?
について説明あるいは記載し、下町ロケットの魅力に迫りたいと思います!
あらすじ
TBSのサイトに記載されている内容をそのまま、以下に記載します。
満を持して、記者会見の場で無人農業ロボットの開発を発表した帝国重工の次期社長候補・的場(神田正輝)。しかし翌日、朝のニュース番組で取り上げられていたのは重田(古舘伊知郎)や伊丹(尾上菊之助)らが手掛けた下町トラクター「ダーウィン」だった。さらに追い打ちをかけるように、週刊誌に的場に関連する記事が。それは、今までいくつもの下請け会社を潰してきたという、的場の暴露記事だった。怒りに震え、後のない的場は無人農業ロボット「アルファ1」の開発を急がせる。
一方、佃(阿部寛)ら佃製作所のメンバーも、敵ながら重田らの鮮やかな手腕に驚きを隠せなかった。そんな時、野木(森崎博之)から大規模な農業イベントである「アグリジャパン」の開催を聞いた佃は、殿村(立川談春)を誘い会場へ足を運ぶ。
引用元:日曜劇場 下町ロケット あらすじ
佃社長の言葉
コピーにオリジナルが負けてはいけない!
この言葉は、確かダイダロス等による無人農業ロボットダーウィンのデモンストレーションのビデオが放映された際に、佃社長が言ったと思います。
ただ、「負けてはいけない!」のは当然なのですが、例え今は押され気味でも「負けられない!」いう感じだったのではないかな、と思いました。
なぜなら、野木教授は、「(勝つか負けるかは)制御コードを盗んでから、キーシンがどれだけ開発を進めたかによる」と(弱気?に)言っていたように感じたからです。
ぜひ、制御コードに対するオリジナルの意地を野木教授には見せてほしい、と思います。
なお、特許的な観点からすると、制御コードに関わる技術を野木教授が特許出願して権利化しておけば、キーシンの制御コードの盗用有無に関わらず、ダーウィンにおける制御コードの使用は特許侵害!といえたと思われます。
※基本的に、単なる人工的な文字列は、著作権では保護されますが、特許法では保護されません。
しかし、ここでの制御コードは、無人農業ロボットを制御するためのものであり、無人農業ロボットのどこをどう制御するかを明確に記載しておくことで特許で保護されると考えます。
余談となりますが、知的財産分野をみても、いろいろな違法コピーが世間には氾濫しており、オリジナルの影が薄くなっています。
ぜひ、日本のものづくりのためにも、オリジナルへの声援をお願いします。
失敗こそ、開発の宝!
この言葉は、佃社長が、無人農業ロボットの制御精度が10cm程度でてしまう状態のときに言ったと思います。
その通りの言葉ですね。
失敗したことで、「なぜ?」ということを自然に考えざるを得ないので、その失敗の原因を比較的に早く特定でき、結果的に現状を大きく前進させる可能性があるからです。
実際に、佃製作所はそのあとの制御精度を5cmまで詰めることができています。
失敗はつらいものですが、開発に限らずこのような気持ちの持ち方を忘れずに、物事に取り組みたいものです。
なお、なぜ、無人運転では通信システムとトランスミッションの連携がうまくいくと、制御精度が向上するのか?
ということを理解するのに、例えば車で直線からカーブを曲がり切りる際の遠隔操作による自動運転をイメージしてください。
スピードの出ている直線から(トランスミッションによる)減速をしてカーブに入り、カーブを曲がりきったところで、再び車を(トランスミッションで)加速します。
もし、通信システムで、「曲がれ」というタイミングがずれてしまうと、車はカーブで走行車線からずれて、脱線(悪い精度)してしまい、最悪は事故となってしまいます。
ですから、トランスミッションと通信システムとの連携は、無人運転技術ではとても大切になってきます。
しかし、佃製作所、開発資金は大丈夫でしょうかね??
帝国重工のアルファ1
ダーウィンとの性能比較の結果はひどいものでした。
そばにいた野木教授がとても不憫でなりませんでした。
耕作性能の低さ
作中で行っていたのは、畑や田んぼを耕す工程でした。
これは、固まっている土を掘り起こして、空気に触れる表面を多くして土を軟らかくするものです。
この目的は、植えた作物の根がよく土に張り込むようにするためです。
勿論、病害の予防や肥料の均一化といったことに対しても、大切な工程です。
このため、耕した部分は一様に盛り上がっているべきでしたが、アルファ1の耕した後は、ダーウィンに比べて、盛り上がりに欠け、かつその盛り上がりも不均一でした。
つまり、土を耕す刃の部分の回転数が、アルファ1の移動速度に対して全く不足して、あまり耕せていないことを示していたようです。
ちなみに、無人農業ロボットは現在、某企業で実際に製品化されつつありますが、現状はGPS信号による位置制御を行い、プログラムで決められた作業をするものであるようです。
しかし、今後はもっとIOT(internet of things)で外部環境情報をインターネット経由で取り入れ、AI(artificial intelligence)の活用で、より作業環境に応じた作業の最適化を行っていくと思われます。
かかしを踏み倒したこと
この部分も予想していましたが、ちょっと(野木教授には特に)ショッキングなシーンでした。
原因はセンサー汚れとのことでした。
しかし、このセンサーの付いている部分は、トラクタの運転席近くの前面であると思われます。
このため、試験走行中や耕作している際に汚れることはあまり考えられず、最初から汚れていたの?と思ってしまいました。
いずれにしても、センサーがちょっと汚れた程度で、こんなことが起こってしまうとなると、そもそものアルファ1の設計思想自体が悪いともいえます。
アルファ1のイメージ低下のための演出とは思いますが、ちょっと後味が悪かったですね。
アルファ1がバランスを崩して横転したこと
泥のついたタイヤが、移動のために設けた橋からスリップして横転しました。
これも、トランスミッションの設計の悪さを示していたようです。
大型のトラクタなどは重心が高くなりがちなので、そもそもバランスを崩しやすいのです。
ちなみに、トラクタは、効率的な大規模農業を行うことができるよう実施された圃場整備後(今から40年前ぐらい?)に、広く使われるようになりました。
この圃場整備後に、田んぼや畑の1枚の大きさは飛躍的に大きくなりました。
しかし、日本の田んぼの大きさは、圃場整備後でも、アメリカほど大きくできずに、1枚の田んぼから別の田んぼに移動する際には、トラクタは、1メートル程度の段差のある土手や畦を頻繁に乗り越えなくてはなりません。
このため、日本の場合には、
- トラクタをあまり大きくしないこと(作中でも、「うちの田んぼに入らない」と殿村?が言っていたように記憶しています)、
- 重心を低くしてバランスなどを重視すること、
は、アメリカのトラクタなどよりも重要になってくると思われます。
下町トラクタの商標取得は誰ができる?
前回から、「下町トラクタ」という言葉が出てきています。そこで、この「下町トラクタ」の商標をだれが取得できるのか考えたいと思います。
由来は?
たぶんダイダロス側がマスコミに仕掛けたのでしょうが、マスコミがダーウィンに対して命名したようになっています。
そもそも、商標権の対象となるの?
なります。
具体的な例を以下に示します。
下町ボブスレー(登録第5600087号) 商標権者 下町ボブスレー合同会社
誰が商標取得できる?
ダーウィンが「下町トラクタ」に結び付けられ、「下町トラクタ」はTV放映や大規模な農業イベントである「アグリジャパン」で有名になってしまいました。
つまり、すでに「下町トラクタ」はダイダロス側の商標として著名となっていると思います。
このため、帝国重工は勿論のこと、佃製作所や野木教授が、仮に「下町トラクタ」について商標出願をしても、ダイダロス側の著名な商標の先取りと判断される可能性が高く、佃製作所や野木教授は「下町トラクタ」の商標を取ることはできないと思われます。
残念ですが、「下町トラクタ」の商標権は、ほぼダイダロス側が取得可能といえます。
なお、最近、日本国内では、特定の企業が使用もせずに次から次へとの商標出願をしていることが問題となっています。
それに対して、特許庁も、使用しない商標出願に対して注意喚起を行っています。
その注意喚起はこちら
このような注意喚起があるから大丈夫!とは思わずに、使用する商標は必ず商標出願して権利を取得してください。
まとめ
今回は、以下の気になる点について、個人的な経験と知識とから書かせていただきました。
- 佃社長の言葉
コピーにオリジナルが負けてはいけない!
失敗こそ、開発の宝! - 帝国重工のアルファ1
耕作性能の低さ
かかしを踏み倒したこと
アルファ1がバランスを崩して横転したこと - 下町トラクタの商標取得はだれができる?
由来は?
そもそも商標権の対象となるの?
誰が商標取得できる?
今回は、野木教授がさらし者になり、大変痛々しかったです。
次回の巻き返しと、島津元副社長の活躍に期待しましょう。
もし、わからない部分や疑問点などありましたら、ぜひコメントまたはお問い合わせください。
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