【スタッフ視点の知財ブログ(9)】
12月といえば、クリスマスに年末にとイベントが多い月です。
が、忙しい反面、街中もイルミネーションで華やぎ楽しみも多い季節ですね。
クリスマスにおいて、その華やぎを脇から盛り立てるのはなんといっても、たくさんの小物類といえるでしょう。
では、この小物類は知財とは無縁なのでしょうか?
無縁とまではいかなくても、どのような知財が関係しているのでしょうか?
そこで今回は、
クリスマスなどのイベントを盛り立てる小物類と知財との関係を知りたい方に対して、
実際、今年のクリスマスで気になった小物類をスタッフNさんに報告してもらい、それに基づいて、小物類に関係する知財、特に意匠法について説明していきます。
これを読むことで、具体的な知財の活用方法として、
- 意匠法の保護対象
「物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの」 - 意匠法の特徴
登録されて公開されること、秘密意匠制度、関連意匠制度、部分意匠制度、組物意匠制度、保護期間 - 意匠法の改正
保護対象の拡大、関連意匠制度の要件緩和、保護期間
が理解できるようになります。
少しでも知財の力を活用していただければ幸いです。
今年のクリスマスで注目した小物・・・、
それはアドベントカレンダー!!
スタッフNです。
我が家では毎年、12月に入る前に
アドベントカレンダーとクリスマスツリーを準備します。
子供達はアドベントカレンダーを毎日開けながら、
クリスマスまでのカウントダウンがはじまります。
ちなみに*アドベント(Advent)とは、イエス・キリストの誕生を待ち望む期間のことで、
「到来」を意味するラテン語のAdventusからきているそうです。
毎年我が家では、定番のチョコやキャンディーの入ったアドベントカレンダーを用意します。
が、今年はお菓子ではなく、おもしろ消しゴム????で有名な株式会社イワコーさんの消しゴムが入ったアドベントカレンダーを購入しました!
(子供達はアドベントカレンダーを朝一で開け、食べてしまうため、お菓子以外のアドベンドカレンダーは親としてはありがたいです。)
全部で24個の消しゴムが入っていますが、クリスマス関連ではない消しゴムがたまに入っているのもユーモアがあり、私的には楽しみの1つになっています。
作りも細かく、分解したり組み立てたりもできる消しゴム。
色味もビビットでかわいい消しゴムを毎日開けるワクワク感が子供にとって(大人にも)たまらないです(笑)。
12月に入ってからお店を数件回りましたが、お菓子のアドベントカレンダーが品切れになっていました。
年々、アドベントカレンダーが日本にも浸透してきているように感じます。
今後は、クリスマスツリーやクリスマスプレゼントと同じくらいアドベントカレンダー人気や需要が高くなっていくのではないかと思います。
株式会社イワコーさんのような子供も大人も楽しめるアドベントカレンダーがどんどん発売されて欲しいですね。
小物類に関係する知財、特に意匠法の説明
意匠法の保護対象
弁理士須藤:アドベントカレンダー、うちでも子供が小さいときに、買っていたし、友人からプレゼントされていたよ。
懐かしいね。
昔は、窓を開けるとメッセージや写真があったような気がするけど、今はお菓子や消しゴムだっりするんだね・・・・
スタッフN:それだけでなく、レゴブロックなんかも入っているものもありますよ。
・・・・
で、このアドベントカレンダー自体が意匠法で保護されるのでしょうか?
弁理士須藤:今までも言ってきたけど、
意匠法における保護対象は、
「物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの」。
簡単にいうところの「(形と色を有する)物品の美的外観」だから、アドベントカレンダー自体も意匠法の保護対象にはなりえるね。
ただ、意匠法も、新しくて他の人が容易に創作できないものでないと、権利化することは難しい。
この観点で、アドベントカレンダーをみると、アドベントカレンダー自体は古くからあり、そのレイアウトもクリスマスにちなんでいる。
だから、かなり奇抜なデザインでないと、一般には、アドベントカレンダー自体を権利化することは難しいかもしれないね。
スタッフN:じゃ、このかわいい消しゴムたちのほうが独自性を出しやすく、意匠権を取りやすいのですね。
弁理士須藤:その通り!
実際に、株式会社イワコーさんは、消しゴムについて、現在(2019年12月17日時点)、35件の意匠権を有しているね(特許庁の特許情報プラットフォーム(J-Plat-Pat)(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/t0100)による調査結果)。
そのうち、Nさんが写真で載せたもののなかで、意匠権があるのは以下のものになるね。
意匠登録1464686 |
意匠登録1527288 |
意匠登録1572112 |
意匠法の特徴
スタッフN:あれっ???
私が並べた消しゴムすべてが登録されているわけではないんですね?
なぜですか??
弁理士須藤:考えられる理由は以下の4つかな。
- 意匠権を取ろうとして意匠出願したけど、似たようなものが既に出回っていて、権利化できなかった。なお、意匠法では、権利にならないと出願した事実は公開されないんだよ。
- そもそも意匠出願していない。理由としては、1)意匠権を取ろうと考えずに、先に製造して販売してしまったから。2)すでにそのデザインがありふれているので、権利化できないと思ったから。3)意匠法そのものの存在を知らなかったから。
- 出願しているが、まだ審査が終わっていない。
- 権利化されているが、公開されていない。
スタッフA:意匠法では、特許のように、出願したらすべて公開されるわけではないんですね。
なるほど。
・・・・
ちなみに、権利化されても公開されないというのは、どういうことでしょうか?
通常、権利化されたら、その代償にその内容が公開されることが原則ではないのですか??
弁理士須藤:それが原則なんだけど、意匠はデザインなので、マネがされやすい。
このため、権利化されても、権利化後から最大3年間、その意匠の内容を秘密にすることができるんだよ。
これを、秘密意匠制度といって、意匠権を取ったうえで、商品(例えば車やスマホ)の販売時期に合わせてその意匠権の公開を行うことで、効果的に他社の真似を防止することができるようになっているんだよ。
スタッフA:なるほど。・・・・・
あっ、今気が付きましたが、意匠では、色が異なると意匠が異なるのですよね。
ということは、私がゲットした熊の消しゴムと、登録されている熊の消しゴムの意匠権とは異なるということですか?
弁理士須藤:そうだね。
でも、色違いで形状が同一だと、意匠としては類似していることになる。だから、登録されいている熊の消しゴムの権利範囲に、Nさんがゲットした熊の消しゴムは含まれることになるんだよ。
ちなみに、熊の形状が同一ではないが形が若干違うような2つ以上の類似する意匠出願をする場合には、同一人が先の意匠出願(本意匠といいます)からその出願が意匠広報に載るまで(約8か月)に別の類似する意匠出願(関連意匠といいます)することで、それらすべての意匠権を受けることが可能になるんだよ(これを関連意匠制度といいます)。
スタッフA:なるほど、権利にならないと公開されないし、
制度的には、秘密意匠制度、関連意匠制度、がある。
・・・・
意匠法っていうのは、特許とは異なり、仕組みが複雑ですね。
ちなみに、他にも意匠法ならでは制度はあるのですか?
弁理士須藤:そうだね、実は、もう3つ、変わった制度があるんだよ。
1つは、部分意匠制度。
通常は、物品全体のデザインが意匠の対象となるのだけど、この制度は物品の一部分のみのデザインを権利化するんだよ。
例えば、車だと、全体的なデザイン変更は数年に一度あるかないかだけど、一部のみのデザイン変更はそれよりも頻繁に行われる。
このため、この部分意匠制度を用いることで、そのような一部変更されたデザインの保護や、特徴的な一部のみのデザインを保護することが可能になるんだよ。
スタッフA:なるほど。
じゃ、2つ目はなんですか??
弁理士須藤:それは、組物意匠制度だね。
これは、同時に使用される2つ以上の物品で構成されるんだよ。
例えば、1組の紅茶セットなどが該当するね。
これにより、複数の物品の統一感のあるデザインを保護できるようにしているんだよ。
ただ、この組物意匠制度では、対象になる物品が定められているので自分たちが物品の組合せを勝手に決めることはできないのが現状だね。
スタッフA:なるほど。
じゃ、3つ目はなんですか??
弁理士須藤:それは、保護期間かな。
特許は出願日から20年が過ぎるまで、特許権で保護される。
でも、意匠は、権利化から20年、保護されることになっているんだよ。
意匠法の法改正
スタッフA:そういえば、意匠法の改正があるそうですね(令和2年4月から施行)。
どのような点が改正されるのですか?
弁理士須藤:今回の改正はかなり大きなものとなったね。
以下では軽く説明するけど、大きく分けると3つある。
1つは、上述した保護対象が拡大したこと。
具体的には、「画像」、「建築物」、「内装」のデザインも保護対象になったんだよ。
まず、今まではスマホの画面のデザインは保護できていたものの、例えば道路や壁に投影された画像は保護されなかった。
しかし、「画像」の保護がなされることにより、これからはそのような画像も保護対象になるということだね。
そして、「建築物」は、不動産だから意匠法でいう物品には該当しなかったんだけど、これからは、そのような「建築物」も意匠法の保護対象になるということだね。なお、「内装」も建築物に付随するものなので、同時に保護対象となったということだね。
スタッフA:じゃ、2つ目はなんですか?
弁理士須藤:もう1つは、類似する意匠の保護の強化をしたこと。
具体的には、先ほど説明した、関連意匠制度の要件を緩和したんだよ。
その要件は以下の2つになる。
- 関連意匠の出願できる期間が、今までの本意匠の出願から約8か月から、10年間へ大幅に延長されたこと。
- 今までは複数の関連意匠はすべて本意匠と類似していないといけなかったけど、これからはすべて関連意匠が本意匠と類似していなくても、関連意匠同士で類似していればよいこと。
スタッフA:じゃ、3つ目はなんですか?
弁理士須藤:上述した保護期間だね。
これからは、出願日から25年保護される。
これらの改正によって、企業では、安定したより長期的なブランド戦略を構築できるようになると思う。
まとめ
小物類を保護する意匠法について、以下のような説明をしてきました。
- 意匠法の保護対象
「物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの」 - 意匠法の特徴
登録されて公開されること、秘密意匠制度、関連意匠制度、部分意匠制度、組物意匠制度、保護期間 - 意匠法の改正
保護対象の拡大、関連意匠制度の要件緩和、保護期間
もし、わからない部分や疑問点などありましたら、お気軽にぜひコメントまたはお問い合わせくださいね。
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