【スタッフ視点の知財ブログ(4)】
有名な名前は、それをどのように使用しても、比較的たくさんの人に注目されます。
そういった有名な名前を見つけたいなら、歴史モノが宝の山といえそうです。
しかし、
歴史モノの固有名詞については、実際のところ著作権?商標権?どんな法律で制限があるのかわかりますか?
何に気をつければいいのか、まよっていませんか?
そこで今回は、
歴史モノの固有名詞には著作権や商標権の縛りがあるのか知りたい方に対して、
京都に旅行したスタッフAさんに、具体的な歴史モノに触れた際に感じたことを報告してもらい、それに基づいて、歴史モノと著作権・商標権との関係について説明していきます。
本記事では、歴史モノの有名な名前を使用する上で問題となりそうな著作権や商標権について、
- 利用する前の調査の重要性
- 著作権の保護期間
- 各国毎の著作権の保護期間の相違
- 歴史モノに出てくるフレーズ・名称に対する商標登録の可能性
- 歴史モノの利用の際のもともと持っているブランド力を活用すべきこと
が理解できるようになり、
他人の権利を侵害したことで生じる、使用の中止の請求(差し止め請求)や損害に対してお金の請求(損害賠償請求)などを未然に防止することができます。
少しでも知財の力を活用していただければ幸いです。
商標権や著作権の対象となりうる具体的な歴史モノの固有名詞には何がある??
スタッフAです。
幕末がテーマで、ドラマ、アニメやゲームが流行りましたが、最近では、幕末ものは、エンタメ関連では定番となりましたね。
私は、司馬遼太郎さんの本が好きで、「燃えよ、剣」を読んで以来、新選組のゆかりの地を訪ねたく、事務所の夏休みに京都の壬生寺を訪れました!
壬生寺も参拝客が多く、素晴らしいイラストが描かれた絵馬も多数見かけることができました。
壬生寺は、新選組隊士が増えて西本願寺の駐屯地に移転するまでの間、隊士が過ごしたとされた寺です。
今でも、当時の状況を想像でき、京都で武士として戦い若くして命を落とした隊士の人生を、思い偲ぶことができます。
・・・
新撰組にまつわる記録自体は少ないそうですが、その資料は様々な形に加工され、利用されています。
そのような歴史的な記録や新撰組といった固有名詞や新選組についての小説がどのように扱われているでしょう・・・
ふと、気になり、調べてみました。
すると、著作権法によれば、著作物の公開後、または著作者の死後70年までは、その著作物は保護されます。
つまり、それを超えれば、その著作物を誰でも自由に取り扱うことができるとのこと。
・・・
私がどうこう言えることではないのですが、いままで醸成されてきた新選組のイメージが壊れるような利用が今後されなければいいな、と感じました。
商標権・著作権と歴史モノとの関係の解説
著作権の各国の保護期間
弁理士須藤:Aさんは、この休みで、歴史の都、京都で、新選組の魅力を味わってきたようだね。
スタッフA:京都もかなり暑かったですが、充電できました。
やはり、私にとっても、京都はパワースポットだと思います。
弁理士須藤:・・・
そういえば、著作物の保護について報告しているけど、
日本の著作権法からすると、保護期間は70年となっている。
でも、もっと短い保護期間の国(例えば、イランは死後30年)もあるし、もっと長い保護期間の国(例えば、メキシコは死後100年)もある。
だから、古いからといって、世界各国のものが日本と同様に利用できるかどうかは、各国毎に確認する必要があるんだよ。
スタッフA:そうなんですね。
なるほど。
・・・
じゃ、SNSなんかで、外国のものとかは、日本のものと同様に引用するとまずいかもしれないのですね。
弁理士須藤:そうだね。
著作権に関して、国際法(例えばベルヌ条約)があるけど、すべての国が加盟しているわけではないので、特に注意が必要だね。
しかも、上記条約では最低期間(死後50年以上の保護期間)しか定めていないからね。
・・・
まあ、そのまえに、
日本国内だからと言って、他人のSNSに記載された記事や画像を無断で拝借してはいけないことは当たり前なので、絶えず注意してほしい。
日本の歴史小説の保護期間
スタッフA:もちろんです!
・・・
ちなみに、先の「新選組」の小説であれば、小説の発表から70年が保護の対象期間ですか?
それとも、司馬遼太郎さんが亡くなってから70年ですか?
弁理士須藤:この場合には、司馬遼太郎さんが亡くなったのが、1996年だから、その翌年1997年から70年となるね。
計算が複雑にならないように、翌年の1月1日が起算日となり、2066年12月31日までとなるかな。
歴史モノの固有名詞の保護するものは、著作権?それとも商標?
スタッフA:・・・・
あのう、
「新選組」という固有名詞自体には日本で著作権の保護期間は過ぎていて、自由にだれでも使用できてしまうと考えてよいのですよね?
弁理士須藤:新選組が結成された時点で著作権法や商標の概念はなかったと思う。
ただ、現在の商標法において、「新選組」が商標登録されていれば、登録された商品・サービスに使用することはできないと考えてほしい。
この考えは、当時使用されていたフレーズなどでも当てはまるんだよ。
つまり、古いからと言って、いきなり自由に使用することはやめたほうがよいということだね。
歴史モノの固有名詞のブランド力を最大限に生かすには・・・
スタッA:使用する前に、まずは調査(商標だけでなく、ネットも駆使して使用の実態を調査する)!
ということですね。
・・・
それから、まだ聞きたいことがあるのですが
・・・
「新選組」については自由に使用できるとすると、いま私が持っている「新選組」に対するイメージを壊してしまうような使い方がなされる可能性もある、
ということでしょうか?
・・・
なんか、それはいやですね。
防止することはできないのでしょうか?
弁理士須藤:そうね。
法的には、できない。
・・・
でも、実際には今まで作られてきたイメージを壊すような使用が主流になることはないと思う。
そんなことをする人に対しては、君のようなファンが逃げてしまうことになるので、「新選組」を使用する意味がなくなるからね。
幕末には、現在のような著作権法も商標法もなかったけど、いま君が「新選組」に対してもっているイメージこそが、「新選組」のブランド力であり、それが知的財産でもあるわけだね。
スタッフA:知的財産ってすごいですね。
まさに時を超えて効力があるという感じですね。
・・・
弁理士須藤:そうだね。
我々も、そんなブランド力のある知財の創出や保護や活用に少しでも貢献していければいいね。
まとめ
歴史上出てくる固有名詞の使用上の注意点は、以下のようになります。
- まずは、利用する前に調査(商標だけでなくネット上での使用も)する。
- 歴史小説などは、著作権で保護されているので、保護期間に注意する。
- 著作権の保護期間は、各国毎に異なると考えて、確認する。
- 著作権に関する条約もあるが、加盟していても、同一の保護期間とは限らないので、注意する。
- 歴史モノに出てくるフレーズ・名称に対しては、商標登録がなされている可能性がある。
- もし歴史モノを利用できるなら、もともと持っているブランド力を活用すべし!
具体的には、ファンを裏切らない利用方法が好ましい
もし、わからない部分や疑問点などありましたら、お気軽にぜひコメントまたはお問い合わせくださいね。
なお、画像は、ktnoontea777さんによる写真ACからの写真
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