【スタッフ視点の知財ブログ(3)】
商標としてのネーミングは使用するほど、ブランド力が向上します。
だから、人やメディアなどが多く集中する都心部で使用するネーミングのほうが、露出を多くでき、ブランド力をアップさせるには有利といえるかもしれません。
だから、
ローカルブランドは有名にするぐらいまで育てることはできない!とは思っていませんか?
実は、ローカルブランドをうまく育てる手法はあるのです。
そこで、今回は、
ローカルブランドをうまく育てたいと思っている方に対して、
ふるさとの香川県に帰省したスタッフMさんに、香川県にまつわる商標について報告してもらい、
それに基づいて、ローカルブランドをうまく育てるための3つのポイントについて説明していきます。
つまり、これを読むことで、ローカルブランドを育てるための以下の3つのポイント
- ネーミング自体の特徴
- 地方公共団体との良好な協力関係の必要性
- 地域団体商標の制度
が理解できるようになります。
これらのことが理解できるようになることで、ローカルブランドをうまく育てて、ヒット商品につなげることができ、最終的には地方の活性化に寄与することができます。
少しでも知財の力を活用していただければ幸いです。
香川県がうどん県として有名な理由は・・・
スタッフMです。
これを書いているまさに今(2019年8月15日時点)、大型台風10号が直撃しているのが、私のふるさと、香川県。
先日、帰省し、夏休みは実家でのんびりしました。
そう、
香川といえばうどん!!
帰省中、うどんのお店にできた大蛇のような行列を幾度も目撃しましたよ!
すごかったです!!
やはり、『うどん県』として県をあげて、PR活動に粉骨砕身しているからでしょう。
香川県の頑張りを、ホームページで是非みてくださいね!
香川県のホームぺージはこちらです!!
ちょっと脱線してしまいましたが、
今回は、香川県に関する商標を
特許情報プラットフォーム(J-Plat-Pat)
で調べてみました。
出願人を「香川県」として、商標検索すると、
うどんに関係するもの(一目でわかったもののみ)は以下の6件で複数存在します。
登録番号 | 第5516559号 | 第5540875号 | 第5540876号 | 第5540877号 | 第5544209号 | 第5544210号 |
商標 | うどん県 |
いずれも、香川では空港や駅などのお土産屋さんで目にしたことのあるネーミング(=商標)です。
こんな愉快なネーミングが文房具やお菓子に付いているので、私は帰省するたびに、思わず手に取ってしまっています(笑)。
やはり、ネーミングは、地元の人や観光客の関心・購買欲、香川のアピールを促す有力なツールだと思います。
・・・・
また、これらは、お年寄りにもウケそうなユニークでわかりやすいネーミングだと思います。
そして、なんだか癒され元気が出てくるような感じがします。
やはり、これから高齢化も進むし、高齢者に覚えやすいネーミングであることは必至でしょう。
・・・・
私の地元に対する愛着もますます増えていきそうです。
もちろん・・・
ネーミングにあるように、香川はうどん『それだけだけじゃない』。
ここでは省略しますが、香川には魅力がいっぱいです!!
今回わかった香川県の商標は31件。
同じ四国だと高知県は36件、徳島県は43件、愛媛県は56件。
東京都だとそれは200件でした。
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数が多ければ優っているというのではないのでしょうが、
本来、私が負けず嫌いのせいか、
香川県の商標数をもうちょっと増やしてあげたい、
と感じてしまいました。
(でも、日本一小さい香川に対して、日本一大きい北海道は18件と意外と少ないのですよ。
香川県、がんばってますよね!!)
・・・
より一層故郷が発展する手段として、
魅力的な香川県を発信するために面白い魅力ある商標がもっと増えていってほしい
と思います。
ローカルブランドをうまく育てるポイントの説明
地方自治体の役割
弁理士須藤:私も香川県に行ったことがあり、1日5回(朝昼晩と、10時と3時のおやつで)うどんを食べると聞いたことがあります。
実際に、一日で5件のうどん屋さんを回ったことがあるよ。
また、蛇口をひねると、うどんの出汁が出るとまで聞いて、驚いたね。
まさに、うどんは、香川県民のソウルフードといえるね。
スタッフM:小さい頃は、うどんのある日常が普通でしたが、東京ではうどんを見かけることは少なくなりました。
だから、香川県に帰ると、うどんに関連したネーミングが多く、ほっとしますね。
弁理士須藤:香川県は、うどん・そばの消費量が日本一(一世帯当たり、2017年総務省の調査より)。
そういった意味では、うどんに関連したネーミングが多く露出して当然ともいえるよね。
でも、うどんに関連したネーミングを多く露出させることで、ブランド力アップに繋がり、消費量も増えているともいえるね。
つまり、ブランド力アップにはネーミングの露出を増やすことは必須といえるだろうね。
・・・
ちなみに、今回は、特許庁の特許情報プラットフォーム(J-Plat-Pat)の商標検索で、出願人を「香川県」として検索していたようだけど、なぜなのかな?
スタッフM:香川県で出願されている商標を調査したくて、
結果的に出願人を香川県としたのですが、
・・・・
もっと効率的に検索する方法はありますか?
弁理士須藤:そうだね。
検索項目に、「出願人/権利者/名義人」だけでなく、「出願人/権利者/名義人住所」もあり、それを選んで、検索する手があるかな。
ただ、それだと、ヒットする数が多くなるので、別のキーワードを併用する必要が出てくるね。
ちなみに、香川県が商標を取得すると、当然に、香川県自身はその商標を使用することができるよね。
でも、香川県は、地方公共団体であるから、その地域のブラン力アップに資する企業に、比較的に公平な観点で、使用許諾を積極的にする傾向があると思う。
つまり、民間企業が商標権を取得して他の企業にそのネーミングの使用許諾をするよりも、地方公共団体が商標権を取得して民間企業にそのネーミングの使用許諾をするほうが、より多くの民間企業がそのネーミングを使用できるチャンスがあると思うよ。
スタッフM:ということは・・・
地方公共団体が商標権を取得することで、そのネーミングを使用する民間企業を増やすことが容易で、結果的にそのネーミングの露出を増大させる可能性が高いということですね。
つまり、香川県が商標権を取得することで、そのネーミングに係るブランド力アップを容易にでき、もっと香川県が有名になる可能性が高いということですね!
弁理士須藤:まあ、そう考えてもよいと思うよ。
しかも、その場合には、県に対してその商標に係る事業の相談もしやすいだろうし、そのネーミングを使用希望する企業の規模や条件もそれほど厳しくないと推測できる。
だから、その商標権の恩恵にあずかる企業数は比較的多いのかなと思うよ。
地域団体商標の特徴
ちなみに、商標は、商品のリンゴに対して、ネーミングとしてリンゴはダメなのは知っているよね。
スタッフM:もちろんです。
だって、そんなのに商標権を与えたら、その商標権を持っている人か、その人から使用許諾を得た人しか使用できなくなり、日常生活にも支障がでますので。
弁理士須藤:でも、それに近いもの、例えば、商品「兵庫県産の和牛の肉」に対して、商標「神戸牛」(商標登録番号第5068216号)があるのを知っているかな?
スタッフM:えっ、・・・
そんなの商標権になるのですか??
弁理士須藤:うん、
これは、地域ブランドの育成を図るために、2006年から施行された「地域団体商標」の制度なんだよ。
主な特徴は、以下のようになるかな。
- 権利取得できるのは、商工会議所などの団体で、株式会社や個人は不可であること。
- 商標の特徴は、「地域名(古い地域名も可)+商品・サービスの普通名称」であること。
- このときの地域名は、後に続く商品・サービスと密接な関係にあること。
- この商標は使用され、需要者に広く知られていること(知られている程度は一地域で可)。
- この団体の構成員は、使用許諾なしに使用できること。
- この団体への加入条件は厳しくないこと。
地域団体商標に当てはまらない???
スタッフM:えー、すごい便利な制度ですね。
とすると
・・・
だったら、商品「香川県産の手打ちうどん」に対して、商標「讃岐うどん」は、この制度を使用すれば取れるのですよね?
だって、讃岐は、香川県の地方を指すので、
上記の条件をすべてクリアするじゃないですか??
弁理士須藤:・・・・
・・・・・
実は、「讃岐うどん」は、すでに日本全国で有名でいたるところで作られ、使用されて、地域を限定できないので、上記制度でも権利化はされなかったんだよね。
いわば、出願を検討した時点で、「讃岐うどん」は有名すぎてだめだったんだよね。
スタッフM:えー、そんなのあんまりです。
ひどいです!!!
弁理士須藤:同様のものだと、「サツマイモ」とか「伊勢海老」とかが、該当するかな。
・・・・
だって、これらも、いまさら商標権がありますと言われたら、一般の人までも困ってしまうでしょう?
スタッフM:うーん、仕方がないです・・・
でも、私は応援しますよ!!
だって、いつだってふるさとは活気を保っていてもらいたいですから。
弁理士須藤:その意気です。
我々のできることで、お客様を応援してきましょう!
例えば、法改正などの情報の告知なども、迅速にお客様に発信していければ、時流に即したアドバイスがしていけると思いますね。
まとめ
ローカルブランドのうまく育てるには
- ネーミング自体が、愉快で、癒され元気が出て、
地元のお年寄りにも覚えやすく受けそうでユニークであること。
ネーミングも複数あることが好ましい。 - 地方公共団体と協力関係を築き、ネーミングの露出増大を図ること。
例えば、地方公共団体が商標権を取得し、自分を含めて多数の事業体がそのネーミングの使用許諾をうけることで、使用する企業の増大を図ること。 - 地域団体商標の制度の活用の検討。
普通名称に近いので、露出増大が容易。
注意点として、使用できる企業は特定の地域に限定されること。
もし、わからない部分や疑問点などありましたら、お気軽にぜひコメントまたはお問い合わせくださいね。
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